「奈緒子ちゃんに聞いて欲しいことがあるの。」
「俺たち、婚約したんだよ。」
…こんな報告がいつしかあるのでは、と予想はしていたけど、実際に聞くと自分がどういう気持ちになってしまうのか予想ができなかった。
奏ちゃんが…小さな頃から恋していた幼なじみが、私とは別の人と新しく人生を歩もうとしている。
2人の親密な空気を感じるようになってから、なるべくそれを先伸ばしにしたくて、最近は忙しさにかまけてここに来なかったのかもしれない。
現実に直面しているはずなのに、私はそんなことを考えていて、頭の中はとても冷静で、感情は驚くほど動かなかった。心のほうは、とっくに納得していたのだと思った。
「おめでとうございます。2人がしあわせそうで、嬉しい。」
心からの言葉をかけた。
いつも周りに気を配る志帆さんは、たぶん私の抱えている気持ちにだってはじめて会った時から気がついていただろうから。
私は大丈夫ですから、お2人でしあわせになってください。そう伝えたくて。
もう胸は痛まない。
私は…大丈夫だ。
