キミがこの手を取ってくれるなら


「小山くんが来てくれた頃はね、カフェスペースをオープンしたばっかりだったから大変だったの。」

常連さんにサービスしていたコーヒーがとても好評だったので、カフェスペースでゆっくり味わってもらいたかったんだそうだ。

棟続きの隣の空き店舗を利用して作ったカフェスペースは、最初は陽介さん一人で手が足りていたけれど、口コミで評判が広がって忙しくなってしまったらしい。

「一人でカフェやってるのも限界でさ、表に貼り紙したらその日のうちに彼がふらっとやって来てね。『今日からでも働けます』って。見ての通りイケメンだろう?面接無しで即採用!って。」

「小山くん、働きものだし助かってるの。」顔だけじゃなくてね、と志帆さんが笑った。

どうやら、奏ちゃんはこの人たちに相当頼りにされているようだ。ふと見上げると、奏ちゃんは恥ずかしそうに、でも嬉しそうに笑っていた。


「ただ、一つだけ困ったことがあってね…」
志帆さんが続ける。

「お客さんが増えちゃったの…それだけなら嬉しい悲鳴なんだけど、一つだけパンを買って、カフェスペースに長居しようとする女の子ばっかり。」

きっと奏ちゃん目当てだよね…

「もぅ、最近は小山くんがいる時はバイキングみたいに60分まで、とか時間制限しようかと思ってるわ。」

その言葉に、奏ちゃんが苦笑いした。