キミがこの手を取ってくれるなら


それから、時間をもて余した私達は奏ちゃんのバイト先まで行き、終わる時間を待つことにした。


奏ちゃんのバイト先は「Milky Way」という名前のパン屋さんだった。

お店に入って奏ちゃんに声をかける前に、私は目の前のパンに心を奪われてしまっていた。

カウンターの前にはケーキ屋さんのような大きなショーケースがあり、中にもケーキを思わせるような色とりどりのパンが並んでいた。
「わぁ、可愛い!」と声をあげる私に、カウンターの中にいた女性が声をかけた。


「可愛いだけじゃなくて、美味しいですよ。自信作ですからね。」

そう言ってにっこりと微笑んだ。
すらりと背が高く、ショートカットが似合う、凛とした表情が素敵な大人の女の人だった。


彼女はあれ?といった感じでじゅんたを見ると
「確か、小山くんの…お友達だったよね?」と言った。

「はい。大村です。覚えててくれたんですね。」

とじゅんたが言うと「客商売だからっていうのもあるけど、かっこいい人は早く覚えられるわ。」と形の良い赤い口唇を大きく開いて、ケラケラと豪快に笑った。私は、彼女に一目で好感を持った。


そして私に視線を戻すと「じゃあ、あなたが奈緒子ちゃんね?」と聞いた。


「…はい。そうです。」どうして私の名前が出てくるのかな?と不思議に思いながらも頷く。


「二人のことはね、小山くんからいつも聞いてるの。私は、ここのオーナーの藤井 志帆(ふじい しほ)よ。よろしくね。奈緒子ちゃん。」