キミがこの手を取ってくれるなら


ふいに「なぁ、奈子?」
とじゅんたに声をかけられて肩がビクッ、と跳ねる。

「な、な、な、何??」

動揺しながら返事を返すと、はーっ、と大きなため息を吐かれた。

「悪かったよ。」

「え?」

「さっきは悪かった、って言ってんの。お前の気持ちも考えないでいろいろ言ったし。何考えてんだ、とか。」

やっぱり何考えてんだ、って言われてたんだ。

「俺、奈子とは何でも話せる仲だって思ってたからさ、奈子に彼氏ができたのがショックだったんだよ。しかも他人から聞かされるし…」

…誰から聞いたんだろう?

「でもさ、普段通りにしてくれよな。びくびくされんの嫌だし。黙りこまれんのはもっと嫌だ。」

「その話はしないでって言ったじゃん。」

「……」

まずい。言い返してしまった。
せっかくじゅんたから折れてくれたのに。

私はぼそぼそと言葉を続けた。
じゅんたにはちゃんと話さなきゃ。

「…じゅんたには知られたくなかったの。いい思い出でもなかったし…」

無理やりされそうになったしね、と口を滑らしそうになり、それは慌てて飲み込んだ。

「でも心配してくれてたんだよね。ほんとはね、いろいろあってちょっと弱ってたの。…だから嬉しい。ありがとう。」

これは本音だった。クラスメートから言われる「大丈夫?」とか「相談にのるよ。」と言う探るような責めるような嘘の言葉と、刺さるような視線に疲れきっていただけに、じゅんたが本気で心配してくれたあまりに不機嫌になってしまったのはよく分かっていたから。


じゅんたは私の言葉を聞くと急に笑顔になった。どうやらご機嫌は直ったようだ。


「おお、素直だなー。よしよし。」

私のすぐそばまで近づくと、そう言ってぽんぽん、と頭を撫でてくれた。


今まで何度も私の部屋に来ていつも一緒にいたのに、こんな風に私に触れてきたのははじめてのことだった。

「や、やめてよ!子どもじゃないんだから。」

と言いながらも、顔が赤くなっていくのが自分でもはっきりと分かった。
不意打ちのスキンシップに心臓はワッと驚き、しばらくドキドキが止まらなかった。