キミがこの手を取ってくれるなら


「今日はありがとう。誘ってくれて嬉しかった。」

そう素直な気持ちを口にしたら、「奈子がお礼を言うなんて…明日は大雨だな。」と返された。今日は優しいと思ったのに……やっぱりちょっと意地悪だ。

ムッとして隣のじゅんたを見上げると、じゅんたも何だかムスッとしたような、変な表情をしていた。

「…なぁ、お前奏のとこ、1度も遊びに行ってないんだよな?」

「なかなか行けなかったの。」

「同じ羽浦市内だろーが。駅前なんだし、その気になりゃ電車でだって行けんだろ。」

「俺のメールも無視しやがって。」

「忙しくて…」
そう返事を返すと、さらに表情が険しくなり、こう言葉を続けた。


「…あのな、お前がよそよそしくなってんの、俺だけじゃなくて奏も気づいてんだよ。今日だってお前だけ誘ったら来ないか、逃げるかだろうから一緒に来てくれよ、って奏に頼まれたんだぞ。」


……何それ。線を先に引いたのは奏ちゃんのほうなのに。思いもよらなかった言葉に私の表情も曇る。しかし、じゅんたも不機嫌な表情を隠さずに続けてこう言った。


「まぁ、お前の気持ちも分からなくもないけどなー。……彼氏できたんだろう?」


私は心臓が跳び跳ねるほど驚いた。何で知ってるの??


「考える時間も無く誘ったのは悪かったと思ってたんだよ。奏は奈子に彼氏ができたって知らなかったからな。でも奈子が彼氏のこと気になったら行かないって言い出すと思ったから。だけど、気にしてないどころか…嬉しかったって言われるし…」



その声はだんだんとつぶやきに変わっていき、最後はほとんど聞こえなくなった。お前、何考えてんだよ……と言われたような気がする。