キミがこの手を取ってくれるなら


そう言えば…

「じゅんたは、どうして私のこと『奈子』って呼ぶの?」と聞いてみる。

長年何とも思わず呼ばれていたけど、私のことを『奈子』と呼ぶのは、じゅんただけだ。

「奏と違う名前で呼びたかったんだよ。みんなは『奈緒子ちゃん』で、奏だけ『奈緒』って呼ぶだろ。」

そうだったんだ。

20年近く過ごしていても、こうして知らないこともたくさんある。

これからは、小さなことだって、大きなことだって、こうやって顔を合わせて、伝え合っていければいいな。と思った。


じゅんたがそっと、私の髪に触れる。
「今までは、言葉が足りなかったからな。これからはちゃんと話すよ。」

私の気持ちも、すっかりお見通しらしい。

「キスしても、いいですか?」

わざと丁寧に聞くから、思わず笑ってしまった。

「そういうのは、いちいち言わなくていいです。」

笑いながら答えると、「じゃあ、言わない」と言って、そのまま頭の後ろに手を回した。

そして、ゆっくりとキスをしてくれた。