キミがこの手を取ってくれるなら


「まさか、こんなとこに式場ができると思わなかったけどなぁ。」

チャペルでの挙式の後、親しい友人だけを集めてパーティーを開くらしい。派手な式は苦手だ、と2人で決めたそうだ。

「お前の楽しみは、ウェディングケーキだろ。お前、みんなの分まで食うなよ」

「食べない!」

「…また怒った。いつもだとこれくらいの冗談で怒んないだろ?いい加減、機嫌直せよな。」

「…」

じゅんたと普通に話そうとすればするほど不自然になってしまう。

「ま、しょうがないか。奏の結婚式だもんな。いろんなこと思い出したら、そりゃ複雑だよな。」

どうしてそんな話になるんだろう。
…何も分かってないのは、じゅんたのほうだ。

さっきから、まともに顔が見れない。
話をしても、ぎこちなくなってしまう。
想いをうまく伝えられなくて、息もできないくらいなのに…

「奈子」

「はい?」

「息止まってるぞ?ほら、吸って吐く。式の時も動揺したら深呼吸だぞ。」

「苦しくなったらすぐに言えよ。俺がずっと側にいてやるから、な?」


『ずっと側にいてやる』この一言で、それだけで私はとても嬉しくなって、心が一気に満たされていくのを感じた。

私は、なんて単純なんだろう。
そして、私はこんなにもじゅんたの言葉ひとつで嬉しくなってしまうほど、じゅんたのことが…好きなんだ。……大好きなんだ。


じゅんたも私の言葉で嬉しい気持ちになってくれるのかな?


溢れるほどのこの喜びを、想いを伝えてみよう。あなたが、私にちゃんと向き合って気持ちを伝えてくれたように。


私は、じゅんたに近づいた。
そしてそっとじゅんたの手を握った。