キミがこの手を取ってくれるなら


「私…ばかだから傷ついたのも傷つけてるのも分からなかった。彼が何に必死になってるのかなんて、彼の…家に行くまで…分からなかっ…た」

そこまで話すと言葉に詰まった。少しずつ、身体が震え出すのを感じた。


「奈子…?」


「わ、私…彼の家に行って…部屋に入ったら…すぐに押し倒されて……。怖かったの…男の人があんなに怖いって…思って…」


「奈子!」


突然、両肩を掴まれて大声で名前を呼ばれた。話しているうちに、うつ向いてしまっていたらしい。びっくりして顔を上げると目の前にじゅんたの顔があった。目の縁にじわり、と涙がたまり溢れそうになる。


そんな私の目を見て、じゅんたは、眉根を寄せてとても辛そうな表情をした。


「もういい…もういいよ…」


辛いこと思い出させてごめんな、と言われた。ごめんね、は私のほうだよ。じゅんたは悪くないよ。そう言おうとしても、どうしても言葉にできなかった。


何にも言えない私は、静かに涙を流した。つぐんでしまった言葉を押し流すように。