小さな手にも服の合わせにも茶色い実が握られていて、こぼれ落ちそうな笑顔ときらきらした目が見つめている。


 ハンは子供からふたつの胡桃を受け取ると、ひとつの胡桃の筋を、もう片方の胡桃の腹に当て、ぎゅっと握り込んだ。


 すぐにパキリと音がして、握った手を開くと片方だけ胡桃が割れていた。


「すごい、すごい」

「はやいや」

「僕のも割って」


 次々と差し出される胡桃を割りながら、ハンも笑顔で話に応じている。


「人がいいったら」


 子供の引率として付いてきたあたしは、そんなハンと子供達を遠巻きにして見ていた。


 あたしは胡桃よりも、山ぶどうのほうが好きだ。胡桃よりも簡単に食べられこともあるけれど、めったに食べられないそれは、山歩きの楽しみのひとつだった。

 たとえ実が小さくて、ちょっとすっぱかったとしても、それは変わらない。