由佳は薫の瞳を見つめ返した。

由佳はその真っ直ぐな瞳を、信じようと思った。

何かを隠しているであろう薫のその真っ直ぐな瞳は、きっと本物だと、そう思えたのだ。


河川敷の向こうの地平線に沈む赤い夕日が2人を照らしている。


広い世界で想い合う2人のちっぽけさを嘲笑うかのように、それはとても雄大で美しかった。


「笠原…」

「小野寺薫…」


2人の距離は自然と縮まった。

夕日のせいなのかそうでないのか、2人の頬はほんのり赤く染まっている。


そして2つの唇は、ゆっくりと近付き合った。


そして、2人の唇が重なるか重ならないかのところに来た時、2人の背後で馴染みのある声がした。


「あっれー?笠原と薫じゃん!」


その男のタイミングが悪すぎる登場により、2人の唇は重なり合うことなく離れたのだった。