「お前、もしかして絶叫系苦手?」
足を止めて硬直する由佳を見て、薫が尋ねる。
由佳は大きく頷きたかった。
だが、薫が乗りたいと言っているのだ。
ここで苦手だと言ったら、薫が「それならやめよう。」と言うかもしれない。
「ううん、だ、大丈夫!じゃあ、あれ乗ろっか!」
由佳は平静を装いながらそう言うと、ジェットコースターの方向に向かった。
薫に楽しんでもらうためなら、これぐらいのことは我慢しなければならない。
自分がこの恐怖を乗り切れば、薫に幸せを与えられるのだ。
由佳は自分にそう言い聞かせながら、恐怖で高鳴る心臓の鼓動を必死に抑えようとした。
隣で話す薫の会話の内容など、ほとんど耳に入っていなかった。
ただ、早くこの恐怖の時間が過ぎ去ることだけを願っていた。

