パーク内に入ると、そこはまるで夢の国のようだった。
そこら中でテーマパークのイメージキャラクターが大勢の人に囲まれて立っている。
そんな様子を見ながら、薫が口を開く。
「おー、着ぐるみ大人気。」
「ちょっと…そんな夢のないこと言わないの。中の人なんて居ないんだからね。」
由佳は呆れながらそう言うと、アトラクションに向かう。
パーク内はとても広かったが、由佳は事前にマップを把握して、乗るアトラクションをいくつか決めておいたので、迷うことはなかった。
由佳が足を進めていると、薫が口を開く。
「俺、あれ乗りてー。」
薫がそう言って指差したのは、山の頂上からものすごい勢いで下っていく、ジェットコースターだった。
コースターが山を下るたび、乗客の悲鳴が聞こえる。
「え……」
由佳の額を冷や汗が伝った。
実は由佳は絶叫系が苦手だった。
幼い頃、恭平の家族と一緒に近くの遊園地に行ったことがあったのだが、その時に生まれて初めてジェットコースターに乗り、ものすごい恐怖で泣き喚いたことを覚えている。
由佳がジェットコースターに乗ったのは、人生でその1度だけだ。
その時、ジェットコースターにはもう二度と乗らないと心に誓ったのだ。

