―――…。
「へぇ…薫がそんな事を、ね。」
その日の昼休み、松本先生のもとを訪ねた由佳は昨日薫との間にあった出来事を話した。
「はい…絶対に嫌われてしまったと思いました。小野寺薫にあんなに冷たい瞳を向けられるのは初めてで…」
「そうだったんだね。」
「やっぱり小野寺薫の考えていることは分かりません。距離を置かれたと思ったら突然距離を縮めて来たり、縮まったと思ったらまた離れたり……」
「……そうだね。」
松本先生は何かを考えるように遠くを見つめながら呟いた。
「松本先生は、何かご存知ですか?小野寺薫について…。」
由佳がそう尋ねると、松本先生は困ったように首を横に振った。
「…それが、俺も分からないんだよね。」
松本先生はそう言うと、大きなため息をついた。
「今まで何度もそれとなく尋ねてみたことはあった。…だけどあいつはいつも上手いことかわすんだ。」
「……松本先生にも何も話さないんですね。」
「あぁ、残念ながら何も分からない。あいつが何故アメリカからはるばる1人で日本にやって来たのか、何故あんな豪邸に1人で住んでいるのか、そしてあいつは一体何者なのか――…」
松本先生は神妙な面持ちでそう呟いた。

