その日、由佳は何となく保健室に立ち寄った。

由佳が保健室に入ると、由佳の姿を見た松本先生が一瞬驚いた顔をしてから、優しく微笑んだ。


「あれ、珍しいね。いらっしゃい。」


松本先生はそう言うと、由佳に椅子に座るように促した。


「どう?それであれから、恋は何だか分かったの?」


松本先生は楽しそうにそう尋ねた。

そう言えば由佳がここに来るのは、恋という感情がよく分からずに、松本先生に恋とは何かと尋ねたあの日以来だ。


「…分かりましたよ。でも、恋ってろくなもんじゃないんですね。」


由佳が呟くと、松本先生は笑いながら言う。


「君がここに来るってことは、何かに思い悩んでるんだろうとは思ったけど、今度は一体どうしたの?」


すると由佳は曇った顔をしながら口を開く。


「…小野寺薫の気持ちが分からないんです。」