事の発端は由佳の一言から始まる。


「え?手作りバレンタインチョコ?あげる予定はないけど。」


由佳がそう言うと、華代は信じられないというような顔をした。


「え?だって由佳ちゃんたち付き合ってるんだよね?」

「さぁ…?」

「でも両思いだったんでしょ?」

「まぁ、一応…」


由佳がそう答えると、華代は「それは世間一般では付き合ってるって言うの!」と怒ったように言った。


「彼氏に本命チョコあげないとかどうにかしてるよ!」


イベント好きの華代にとって、由佳が薫にチョコをあげないのはよほど信じられないようで、そこから華代の説教が始まったわけなのだが――…。

バレンタインを間近に控えた2月。

由佳は特に薫にチョコを渡す予定は無かった。

もともと由佳はそういったイベントには興味がない性格で、そもそもバレンタインにチョコを渡すという概念が自分の中になかった。

それに薫は甘いものが苦手だ。