「…弥月」



掠れそうな声で呟くと、弥月はあたしの方を振り返る。


その姿が、窓から入る光に照らされてすごく綺麗に見えた。

まるでこれからどこかに行ってしまう前触れみたいに、キラキラ輝いて。



「…好きだよ」



ぽつりと呟くと、弥月ははあっとため息をついてあたしから目を離す。


「そう」



それだけ言って、また歩き出す弥月にやっぱりあたしは何とも思われてないんだって痛感した。


でも…あたしは弥月の事を嫌いになんてなれないの。

例え弥月があたしの事何とも思ってなくても、嫌いでも。



「保健室着いた。桜花どうするわけ?付き添いで連れてきたけど、授業受ける?」



ガラリとドアを開けて、そのまま立ち止った弥月にギュッと目を瞑るあたし。


話しかけられるたびに、心臓がドキドキ言ってうるさくて名前を呼ばれるたびにくらくらとする。



「あたしは……」


どうしたらいいかよく分からなくて、俯くと弥月があたしの手を引く。


「やっぱり…話ある」



掴まれた腕にギュッと力が入って、痛いくらいになる。


でもそんな手を振り払えないのは、あたしが弱いから?

それとも…手を離されることに怯えているから……?


弥月は、あたしになんの話しがあるの?



「……あたしも、話がある」



ギュッと苦しくなる気持ちを隠して、弥月にそう言ったあたしがいた。


それと共に弥月の手にもギュッと力が籠ったのを、腕が感じ取っていた。