裏庭はとても静かなもので、ざわざわとした教室とは正反対の場所だった。

だけど、真っ白なパレットの様な裏庭だって音楽室の方から聞こえる甘い歌声に色を変えられるのだ。

真っ白なパレットが淡色に染まる--
裏庭がとたんに色彩を放つ、不思議な歌声...

「----♪」

その歌声が始まるとまるでそれを指揮のように、池では鯉が虹色の水をかき回してきらきらと踊り、草木は鮮やかに空高く舞って、花は自らの美を思い出すかのように太陽の方へと強く伸び--

そして僕は、演奏会に招かれた客...

「----♪」
小柄な深海色の長い髪の毛を持った少女が窓から顔を出した。
あの子が...
僕はついにこの歌声の持ち主とご対面できた歓喜で胸の奥がきゅうっとしまった。

「--♪あっ..!」
相手がこっちに気づいたのかと少女の方へ視線を向けると..
いきなり僕の視界は色彩を失い、真っ白になった。