着いたその場所は中庭。
大きな桜の木は中庭のちょうど真ん中に立っていた。
まだたくさんの桜の花を咲かせ、見事に咲き誇っている。
桜は、桜の木へと近付く。
「近くで見ると迫力あるなぁ」
風で散った桜の花びらを、ローファーで一歩ずつ踏みしめていく。
一歩。
また一歩、と。
桜は手を伸ばし、桜の木の幹に触れた。
今度は届く。
美しくも儚い桜の木下、近寄る彼女。
その白く小さな手は木の幹を抱くように包み込む。
「綺麗だよ……」
その瞳は桜の木を見ているようで、どこか遠く違う世界を見ているようだった。
ぶわぁぁっ
突然の強い風。
先程よりも強く、激しい。
視界は薄いピンク色で染まり、周りは何も見えない。
「きゃあっ!」