〜バイク〜

「とりあえず帰ろうか。お家どの辺?」
その人はバイクの荷物入れをゴソゴソしながら訪ねてくる。
「3丁目の方です。須崎(すさき)団地って所です。」
なんで名前も知らない人にこんなに個人情報を伝えているのか不思議だ。
「ああ、あそこなんだ。了解。じゃあ、はい。」
何か頭に硬いものをはめられた。
これは…ヘルメット!?
「な、なんですか!?」
慌てて問いただすと
「何ってヘルメットだよ?ほら後ろ乗りな。」
そう言いながら乗っていたバイクの後ろをポンポンと叩く。
よく見るとその人のバイクは2人乗り用だった。
これに乗るって事…?
自転車の2人乗りはあってもバイクに乗せてもらうのは初めてなあたし。
それに会って間もない人に命を預けるなんて…。
「いや、そんな遠回りでしょうし1人で帰れます。」
と少し遠巻きにいらないと断りを混ぜながら言うと気付いてないフリなのか天然なのかいいからいいから。とあたしをバイクに乗せる。
あたふたするあたしを無視して発車しようとしてるもんだから身を任せるしかない。
でもバイクってどこを持てばいいの…?
腰に腕を回すなんて初対面のしかも男性にできるわけがない。
あたしは控えめに肩をもつ。
すると
「いやいや、そう持たれると俺が怖いから。嫌かも知んないけどちゃんとこうしててください。」
と肩にあったあたしの腕を腰に回す。
ふぇっ!?と変な声が出てしまった。その事にあははっ!と大きく笑うもんだから恥ずかしくなる。
「じゃあ行くよ。」
と言われもう腕を回しているしそうしててくれって言われたんだからそれに従う。
そうしてバイクは発車した。