「体調が悪かったら言ってくれればよかったのに」

どう考えてもお前らのせいだろう。

…と、言ってやりたい所だが助けてもらった人に対して、いち成人女性として誠意ある振る舞いを心掛ける。

「私も気が動転してたみたいで自分でも気がつかなくて。色々と、ご、ご迷惑をおけしました」

「まったくだね」

コウは眉間にギュッと皺を寄せて私を睨みつける。

私の誠意ある振舞いは全く伝わっていないようだ。

「どうして約束を破った?!勝手な真似ばっかりして!」

コウは眉を吊りあげて怒っている。

こ、怖い…

「昨晩俺に連絡すれば、そもそもこんな厄介な事にならなかったんだよ!」

あの甘々笑顔は今や幻と化している。

実際はこんな容赦ない性格だったなんて…ネコを被っていたにも程がある。

「ご、ごめんなさい」迫力に押されて私は低姿勢になる。

怯えるいたいけな小犬のように背中を丸める私を見て、コウは気を落ち着かせるよう肩で大きく息をついた。

「全く、これじゃ何のために俺が薫に近づいたのか解らない」

「人のこと騙したりするからよ」

ボソリと呟くと、再び射抜くような鋭い視線を向けられ、私は下を向く。

「そ、そ、そろそろ熱も下がったみたいだし、お暇しようかなー…」

仏頂面のコウとこれ以上一緒にいるのは偲びなくなり、私はそそくさとベッドから抜け出した。

急に立ち上がったせいで床に足を着いた瞬間に、再び目眩がして膝から崩れ落ちそうになる。