ジキルとハイドな彼

ビクリとしてドアの方を振り向くと、ひょっこりと知った顔の男が姿を現す。

「あんた!どうしてここに居るのよ!」思わず声を張り上げる。

そこに現れたのはコウの後輩、小鳥遊だ。

どーもどーも、と言いながら片手にどんぶりが乗っかったトレイを持ち、例のごとく軽い感じで部屋に入ってくる。

「うわ、薫さん酷い顔!」

言い返す気力もなく、ジロりと小鳥遊を睨みつける。

ここに居るってことは、こいつもあの忌々しい男の仲間だった、ってことね。

目から憎しみが溢れだしそうだ。

「そんな怖い目で睨まないでくださいよー。お腹空いたと思ったからご飯持ってきたのに」

小鳥遊は唇を尖らせて不満気ながらもポケットから鍵を取り出し手錠を外してくれた。

相変わらず気は利くようだ。憎い事には変わりないけど。

「ほら、取り調べといえば親子丼でしょ」

小鳥遊はウキウキした様子でどんぶりの蓋を取る。

「それを言うならカツ丼でしょ」すかさず突っ込む。

「じゃあ、いらないんだ」小鳥遊がどんぶりを遠ざけようとしたので、慌てて自分に引き寄せる。

ふんわりとお醤油で煮付けた卵のいいニオイに食欲がそそられる。

今まで興奮状態にあり気が付かなかったが、随分お腹が空いていたようだ。

夕飯はカロリーメイトしか食べていない上に相当走ったのだから当然だろう。

両手を合わせ、いただきます、と言ってから男子柔道部員のように勢いよく親子丼をかっこむ。