ジキルとハイドな彼

外へ出ると深呼吸をして、新鮮な空気を胸一杯に吸い込んだ。

自分からも酷い臭気が漂っているのがわかる。

隠れてもこの強烈な臭いで気付かれてしまいそうだ。

来ていたマウンテンパーカーを脱ぎ、さっきまで入っていたダストボックスの中に放り込んだ。

完全には消えていないけど、臭いは随分マシになったわね。

12月の冷気に思わずブルりと震える。

路地から先ほど通ってきた、アーケード通りへ戻ろうとしたその時だった。

「信じられないな」

不意に声を掛けられる。

驚いて振り返ると、通りを挟んだ反対側に薄気味悪い場所とは不釣り合いな美しい人が立っていた。

「コウ…」

驚きで私は目を見張る。コウは口元に手をあて肩を震わしながら、こちらにゆっくりと歩み寄ってくる。

私の目の前でピタリと足を止めると屈み込んで顔を覗きこむ。

「笑える程必死だね、そして惨めだ」

コウの笑顔はゾクリとするほど冷たく、それでいて美しい。

身を離そうとしたが手首を掴まれる。咄嗟にふりほどこうとしたが、びくともしない。

「あなた雇われた人達の仲間だったの?」

「だとしたら?」片眉をあげて聞き返す。

「騙したのね」悔しさで血が出るほど唇をきつく噛みしめ、睨みつける。

答える代りに腕を握った手に力を込める。

「確保」

無表情のまま、コウは私に言い放った。