ジキルとハイドな彼

走る走る走る

耳の奥が痛くなり、口の中に血の味が広がる。

それでも立ち止まる事は許されない。

聡との約束を守るためにアタッシュケースを抱えて走り続ける。

追手を撒くために、路地を曲がると鳥の杜商店街に出た。

店のシャッターは下がり人っ子一人通る気配がない。

いつも通り抜けるこのアーケードもゴーストタウンのように静まりかえっており、駆け抜ける足音と荒い息遣いが響きわたる。

その時、背後からもう一つの足音が聞こえてくる。

「いたぞ! あそこだ」ダ―クスーツを着た追手の一人が指さし、大声を張り上げる

ちらりと横目で振り返ると、複数の仲間達が通りに姿を現した。

脚力には自信がある、といっても所詮は女だ。

男にとっては、そこそこ足が速い、といった程度。

このままじゃ、捕まる!

突き当りの角を曲がり、一本の小道に駆け込む。

肩で息を着きながら辺りを見回すと、ふとダストボックスが目についた。

一瞬躊躇うが、迷っている時間はない。

パーカーのフードを被りチャックを締めると、覚悟を決めて、えい!と中に入る。

その上から身を隠すように黒いごみ袋を乗っける。

強烈な臭気が立ち込めて思わず吐き気が込み上げてくるが、なんとか気力を振り絞り持ちこたえる。

間一髪で、複数の足音が近づいてきた。