ジキルとハイドな彼

「この話は絶対人には言わないでほしい。これ以上誰かを巻きここみたくない」

聡は真剣な眼差しで私をジッと見つめる。

「大丈夫、誰にも言わないから」私は聡を安心させるように微笑んだ。

「全く薫にこんな事頼むなんて俺もどうにかしているな」聡は引き攣った痛々しい笑みを浮かべる。

「あなたが困っている時に、役立てることがあれば嬉しいわ」

私は励ますように聡の手を握り締めた。

「薫…」聡は私の肩を抱き寄せると、ふっくらとした厚みのある唇を重ねた。

こんな状況で非常識だが思わず私はうっとりする。

唇が触れ合うだけのキスをすると、聡は名残惜しそうに身をそっと離した。

「もう出られそう?」もう少し長くキスしていたかったので少々残念だったが、私はこっくり頷く。

「本当にこんな厄介な事を頼んで悪かったね。詳しい事情は後で必ず話すから。水口に荷物を渡したら俺に連絡をしてくれ」聡は私の肩に両手を置く。

「聡は?大丈夫なのよね」

「ああ。薫とタイで暮らすために、なんとかやり過ごすよ」

大きな手で私の頭をくしゃりと撫でた。

「俺が囮になるから15分後に目的の場所へ向かってくれ」頬に一つキスをすると聡はそのまま踵を返す。

「何かあったら必ず連絡するように」と言い残して、聡は足早に部屋を出て行った。