家に帰りシャワーを浴びると、そのままベッドになだれ込む。

髪の毛を乾かさないと…と思いつつも疲れきった身体はフカフカした布団に沈み込み、何時の間にかトロトロと眠りに落ちて行く。

その時、玄関のチャイムが鳴った。

心地よい眠りを妨げられむっつりと起き上がる。

それにしても誰?こんな時間に…。

警戒してドアを開けるのを躊躇していると続け様にチャイムが鳴る。

ベットから降り、足音を立てないよう玄関へ向かうとドアスコープから外を覗く。

小さな穴から見えたのは意外にも会いたくてたまらない人の姿だった。

思いがけぬ訪問に興奮して、勢いよくドアを開ける。

「どうしたの?こんな時間に」愛しい人の首に手を回す。

逞しい腕にぎゅっと抱きしめられると、タバコとコロンの混じり合った匂いがした。

「薫、夜遅くに突然来てごめんね」

「ううん、来てくれて嬉しい、聡」厚い胸板に顔を埋める。

暫く抱き合ってから、身体を離し部屋の中に招き入れた。


聡は体格がガッチリしているので、1DKの私の部屋にいると窮屈そうだ。

ベッド脇にどっかりと腰を下ろして胡坐をかく。

お茶を出そうとしたら「すぐ行かなきゃいけないんだ」と言って手で制した。

せっかく会えたのに…。

しょんぼりとして聡の対面に腰を下ろす。

「頼みがあるんだ」聡はシリアスな表情で私を見据えた。