ジキルとハイドな彼

「薫、何してるの?」私の顔を見るなりコウは吹き出した。

「…最近話題の美容健康法よ。知らないの?」慌てて頬から手を離す。

「なんか逆効果な気がするけど」コウはつねった頬をそっと撫でる 。

「赤くなってるよ」

顔を覗き込まれると先ほどのシーンが思い返されて、触れられている箇所から熱を帯びていく。

邪な考えを振り払うどころかこれでは逆効果だ。

「そ、そ、それ位強い方が効果があるのよ」思わず私は顔を背けた。

「ランドリーから服が返って来たよ」

コウがビニールに入れられた私の黒いワンピースを差し出す。

「ありがとう」

火照った顔を隠すように俯いてお礼を言う。

何時の間にか窓の外は薄暗くなり始めていた。

居心地のいいコウの部屋は名残り惜しいが、ワンピースの口実がなくなった以上、ゴロゴロと寛いでいる訳にはいかない。

酔っ払って散々迷惑掛けたので、コウもそろそろ帰ってほしいところだろう。

ランドリーから返ってきた服に着替えて帰り支度をする。

「昨日から色々ありがとうね」

「下まで送るよ」

「いいわよ、外は寒いから」

「いいんだよ、僕がそうしたいんだから」

コウは優しく微笑んでニットカーディガンを羽織った。

本当に抜かりないほど紳士だわ。