ジキルとハイドな彼

「じゃあ、薫はあるの?」

「み、見ての通りよ。いつも本気になっちゃうからボロボロに傷つくんだわ」

私は溜息をつき自嘲気味に笑う。

「ふうん、じゃあ俺にも教えてよ」

「え?何を?」

言っている意味がわからず、私は首を傾げていると、長い指が顎にそっと添えられる。

コウの漆黒の瞳に見据えられると金縛りにあったかのように身動きが取れなくなる。

長い睫毛にすらりと通った鼻筋、そして男のくせにやたらときめ細やかな肌。

至近距離でも綺麗な顔…。

ボウっと見惚れていると鼻先までお互いの顔が近づいていた。

その時、不意に玄関のチャイムがなる。

コウはピクリと一瞬身体を強張らせた。

そのまま顎からするりと手を離し立ち上がると、リビングから無言のまま立ち去った。

何だったのかしら…今のは…

通常だったら、あのままキスされる流れだったように思える。

あんな醜態を晒した私にキスなんてする訳ないわ。

しかし、すぐさま厚かましい思い違いだとその考えを打ち消す。

でも実際コウにキスをされたらどうだろう。

あの整った唇が自分の唇に重なりあったら…考えただけで身体の芯がゾクリとした。

聡という彼がいるのに、美しいとは言え他の男に欲情するとは…。

随分と自分がふしだらな女に思われる。

ヨコシマな考えを振り払おうと自分の両手で頬をぎゅうっとつねった。

その時、コウがタイミングよく戻ってくる。