ジキルとハイドな彼

読み進めていくうちに、つい夢中になって自分のおかれている状況をすっかり忘れてしまった。

ヒロインのキャサリンが亡くなったシーンでは鼻をすすりながらいつの間にか泣いていた。

「薫?どうしたの?!」声を掛けられて、我に返る。

「ご、ごめん。感きわまって」

「ほら」差し出されたティッシュの箱から一枚抜き取り鼻をかむ。

コウは首を傾げての本の背表紙を見る。

「本を読んで泣いてたいたのか。横をみたら泣いててビックリしたよ」

コウは親指でそっと私の涙を拭う。

「ごめんなさい」

「ううん、僕が放っておきすぎたかな、ってちょっと焦った」

コウの気遣いとは裏腹に小説を読んで泣いてたとはお騒がせな女だ。

気づけば外は薄っすら暗くなっていた。いつの間にか時間が経っていたようだ。

「嵐が丘って初めて読んだわ。悲恋だけどすごく一途で情熱的な愛ね」

「女性は好きなのかもね」

「そう。二人で一つの魂なんて、それ程強く結ばれている絆って憧れてしまうかも」

自分でも随分とロマンチックな事を言ってしまったと恥ずかしくなり、へへっと笑う。

コウはどうだろう、と呟き首を傾げる。

「エゴイスティックな愛憎劇って感じがするな。そこまで固執されたら正直怖いよ」

想いのほか辛辣なご意見だ。

「コウは自分でもどうしようもないくらい本気で誰かを好きになった事がないから、そんな事言うんじゃない?」

私は思わずムキになって反論する。

コウは一瞬言葉を失って黙り込んだ。

もしかして…図星?