ジキルとハイドな彼

向かいあって席につくと「いっただきます」両手を合わせて頭を下げると、私は勢いよく食べ始めた。

あり合わせの材料で適当に作った、とコウは言うがパスタもサラダもすごく美味しい。

「コウって料理も上手なのね。女として引け目を感じるわ」

溜息をついて整理整頓が行き届いた部屋をぐるりと見渡す。

「うん、大抵のことはそれなりに出来ちゃうんだ」

謙遜することなく、例のごとく魅力的な微笑みを返される。

「それって自慢?」目を細めてコウを見る。

どうだろう、といってコウは口の端を上げて笑う。

なんとなくその表情が嬉しくなさそうに見えたのは気のせいだろうか。


美味しいランチを食べ終えて、2人で後片付けをする。

食器の洗い方が雑だと文句を言われたので「小姑みたい」と言い返してやったらコウは驚いた顔をしていた。

まだランドリーから服が返って来ないので、それを口実にして、ゴージャスな部屋でもう暫く寛がせてもらう事にした。

コウは「ちょっと片付けたいことがある」といってソファーに腰掛けノートパソコンを開く。

昨日やり残した仕事を持ち帰ってきているのだろうか。

忙しいのに、あんなバカ騒ぎに巻き込んで申し訳ない。せめて邪魔はしないでおこう

「適当に寛でいて」と言われたので、手持ち無沙汰になったわたしは、リビングの本棚にズラッと並んだ本を物色し始めた。

経済なんちゃらや犯罪心理なんちゃら、など見る気も失せる小難しい表題の本が並ぶ中、「嵐が丘」を手に取る。

これなら何とか読めそうだ。

窓際のラグにクッションを持ち込み、大人しく読書に勤しむ事にした。