ジキルとハイドな彼

「車は?」

「代行呼んだから大丈夫だよ」

そう、と消え入りそうな声で相槌をうつ。

小鳥遊は私が潰れる前に潰れてた…というか潰してた、ということか。

ハイド氏のコウは、夢?

「ここは、コウの部屋?」

うん、と言ってコウは二コリと笑う。

「まさか、春日プレジデンスタワー?」

「そうだよー」さらりとコウは答えた。

春日プレジデンスタワーとはここ最近完成した春日町唯一のタワーマンションである。

上の階になれば分譲だと一部屋億は下らない周辺住民の間ではちょっとした憧れの物件である。

どうして定職についていないコウがこんなゴージャスなお住まいなのか疑問だが、ゴージャスな彼には相応しい。

「あのー、昨日は何かあったのかしら」

何か…とは何か、その、何である。

「あったよ」コウがあまりにもあっさりと言うのでコーヒーを吹き出しそうになる。

まさかコウのような美しい人が私に手を出すとは考え辛い。この場合信用ならないのは自分だ…。

「昨日の夜は激しかったね、薫」

頬杖をついてコウはニッコリ微笑みかける。

私は一瞬にして耳まで真っ赤になる。

顔から湯気が出るかと思うくらい。

「ご、ごめんなさい。その私酔って見境がなくなっちゃったのかしら。その、いつもは自分から迫るような図々しいマネはしないのだけど…きっとコウが美しいから自制がきかなかったのかな…ああ!ともかく嫌な思いさせてごめんなさい!」

頭を勢いよく深々と下げ、テーブルに打ちつけた。コウは肩を震わせ吹き出す。