ジキルとハイドな彼

「薫、起きたんだ。おはよ」

入ってすぐ左側にあるキッチンから声を掛けてきたのはコウだった。

切羽詰まった私とは裏腹に、拍子抜けするくらいリラックスした様子だ。

グレイのカットソーにカーゴパンツを合わせて、細身の黒ぶちメガネをかけている。

昨日のスーツ姿も素敵だったが、ラフな私服姿もなかなかキュートである。

「おはようございます」

自分は酷い格好をしているので―――とは言っても借していただいている物だが―――気まずくなる。

「今コーヒー入れるからそこに座って待っててね」

私はこっくり頷き言われるがままダイニングテーブルに腰を下ろす。

その奥はリビングになっているようで、木目で縁取られた高そうな黒い革張ソファーが置かれている。

しげしげと辺りを眺めているとコーヒーのよい香りがしてきた。

「お待たせ」といってコーヒーの入ったマグカップをコウがテーブルに置いてくれた。

「ありがとう」

マグカップに入ったコーヒーを飲むと深い溜息が出た。

「おいしい」向かいにコウがこしかける。

二人うつろな目をしてしばし無言でコーヒーをすする。

さわやかな出で立ちをしていているものの、コウも昨日は飲み過ぎたのだろう。

二人の間にメローな雰囲気が漂う。

「小鳥遊は?」私が沈黙を破るべく重い口開くとコウは眉を顰める。

「薫に吐かされて帰っていったでしょ?覚えてないの?」

「でも私が眠ってる時、二人で話してたじゃない」

「夢でも見た?」コウは呆れたように目をぐるりと回す。