ジキルとハイドな彼

「私の知らない一面が貴方にはまだまだ沢山あるようね」

私は小さくため息を着く。

そういえば、今日初めてコウの愛車に乗せてもらった。

小鳥遊の言うとおり、本当に車を持っていた。

お米を買うために出してもらうにはちょっと気が引けるような車だけど。

「それを少しづつ知ってみるのも楽しいんじゃない?」

コウは唇の端を上げて悪戯っぽく微笑む。

「それはどうかな」

怪し気なニートと思いきや、その素性は鬼刑事。

度肝を抜くほど広い実家と、えらくビューティフルなご家族がいる。

「でも一緒にいるんでしょ、俺と」

…そして意地悪かと思いきや、時折とびきり甘くなる。

そんな彼に私は翻弄されっ放しだ。

「覚悟してるわ、ハイド氏」

「何それ?」

赤信号で車が停まる。

コウはハンドルを握る反対の手を私の手に重ねて、そっと上から握り締めた。

僅かな間でも、今はこの温もりを感じていたい。

信号が青に変わるまで後少し。




END