ジキルとハイドな彼

「あまり人には言ってないから、薫もあまり口外しないようにしてくれ」

「なんで内緒にしてるの?」

「家柄目当てで寄ってくる女とか結構いたから」

コウはギュッと眉間に皺を寄せ不機嫌そうに言う。私は首を傾げた。

「それは貴方が魅力的だからでしょ。家柄なんてオマケみたいなものよ」

葛城ファミリーの視線が私に再び集まる。

「あれ、私なんか変なこと言っちゃったかな」

気まずさのあまり私はニヤリと笑って誤魔化す。

「素敵な彼女じゃない。航生」

あきが目を丸くして言う。

春子さんもニッコリ微笑み、大きく頷いた。

「でも…私では航生さんに釣り合わないのでは…」

匠さんは、頭から爪先まで視線を巡らせる。

「うちの妻も似たようなもんだ」

「薫も充分可愛いぞ」…何故か田中さんにフォローされる。しかも呼び捨て。

「姉さんも俺も政略結婚だし、ある意味燁子も家にとって有利な結婚をした」

「俺は優秀だからな」

田中さんの自信満々な発言に匠さんはちょっと嫌そうな顔をする。

「だから、末っ子の航生くらい自分が選んだ相手と結婚しても問題ないだろ」

厳格そうな兄から拍子抜けするくらいアッサリとお許しが出た。

「両親は今アムステルダムに行っててご挨拶出来ないけど、薫さんのような可愛いらしいお嬢さんならきっとウェルカムよ。いつでも嫁にいらっしゃい」

春子さんはコウとそっくりな顔で花のようににっこり微笑む。

「はあ…?」

もんの凄い名家だけど、意外とフラットなファミリーのようだ。