ジキルとハイドな彼

「…あの、皆さんは私たちの交際を快く思っていないのかと」

私がモジモジしながら言うと「そんな事ないよ!薫さん!」と、あきが否定する。

「私たちは単に彼女が見たかっただけだよ!」

…野次馬根性かい。

思わず心の中で突っ込んだ。

「同棲している噂の彼女を連れて来いって言ったのに、航生ったら一人で来るんだもん」

燁子さんは不満気に頬を膨らませた。

「だから半ば強制的にお連れしたの。驚いたでしょ?ごめんなさいね」

春子さんはフフっと少女のような無邪気な笑みを浮かべる。

まったくだ。

どんだけビビったことか。

…とは言えず、私は「いえ」と口ごもり、ニヤリと愛想笑いを浮かべる。

「きちんと我が家のことを彼女にお話しして、こうちゃん」

春子さんはコウににっこり微笑みかける。しかし何だか凄みのある口調だ。

コウは小さくため息をついて私を見据えた。

「薫、葛城商事って知ってる?」

「も、もちろん…」

日本5大商社のうちの1社だ。

しがないOLの私ですら耳にする程の大企業である。

「うちの父が代表取締役を勤めているんだ」

「はぁ?!」

思わぬ展開に私はデカい声で聞き返す。

確かに初めて会った時から、コウは浮世離れした印象を漂わせていた。

それはお育ちのよさから来るものだったのかもしれない。

しかし、これほどとはな。