ジキルとハイドな彼

江藤が深々と頭を下げると男は「ご苦労」と言わんばかりにサッと片手を上げる。

その小慣れた仕草が、上に立ち人を使う立場であることを暗に感じさせた。

「これはこれは、沖本薫さん。またお目にかかれて光栄です」

少し吊ったアーモンドアイに柔らかな物腰。

だけど、どこか威圧感を感じさせる。

…でた、コウのおっかない兄。

「この間はきちんと挨拶出来ず申し訳ありませんでした。航生の兄で葛城匠と申します」

おっかない兄、改め匠さんは折り目正しく一礼する。

私もつられておずおずと頭を下げた。

「薫さんは、うちの航生と仲良くしていただいているようだね」

匠さんの口角は上がっているものの、目は笑っていない。

そのギャップが、やっぱりおっかない。

「我が家へようこそ。皆お待ちかねだよ」

「て、手土産を買って来るのを忘れました」

匠さんは、ぷっと吹き出す。

「お気遣いは無用です。お呼び立てしたのは此方なので」

さあ、どうぞ、と言ってコウのお兄さんはニコリとエレガントに微笑んだ。


中に入るとエントランスホールの天井は高く、ドーム型になっている。

上部はステンドグラスがはめ込まれており柔らかな日差しが差し込んでいる。

これが個人所有の邸宅とは…

私がお口あんぐり状態で天井を見上げていると「薫、こっちだよ」と言ってコウに手を引かれる。

私は導かれるまま奥の部屋へと向かった。