ジキルとハイドな彼

黒塗りの車はお城のような建物の前で停車する。

なんだここは…

車の窓から口をポカンと開けてコロニアル風の建物を眺めていると、後部座席のドアが開いた。

「薫さま、どうぞ」イケメンに促されるまま車を降りる

辺りを見回すと噴水までご丁寧に設えており、その向こう側には色とりどりの花が咲き乱れる庭園が広がっている。

イケメンが玄関のベルを鳴らすと、大きな二枚扉の木戸が軋みながら開いた。

中から姿を現したのは、引きつった表情の彼だった。

「薫!」

コウは慌てた様子で私に駆け寄る。

「江藤!彼女に手荒な真似はしなかっただろうな?!」

コウが鋭い視線を向けるとイケメンは無言のまま強面を指差す。

髪は乱れその顔面は引っ掻き傷だらけだ。

「まあ、薫は無事のようだね」コウは急にトーンダウンする。

「一体ここはどこ?」私は怪訝な表情で辺りを見渡した。

「ここは…俺の実家」

コウはバツが悪そうにボソっと呟く。

「はあ?!」私は声を張って聞き返した。

「今日は仕事に行くって言ってなかったっけ?」

「出掛ける、とは言ったけど、仕事とは言ってない。一言も」

コウはツンと澄ました顔でソッポを向く。

「其れにしては小鳥遊に届け物をさせるなんて随分手の込んだカモフラージュじゃない?」

「小鳥遊のためを思って頼んだまでだ」

「また訳のわからないことを!」

私達が騒いでいると、扉が軋みながら開き城の中から男性が出てきた。