ジキルとハイドな彼

私は後部座席に無理矢理押し込められて不服そうに腕を組む。

「私の彼は警視庁の偉い人なんだからね!乱暴したら酷い目に合うわよ!」

父親の権力を振りかざすワガママお嬢様ばりの稚拙な脅しに、イケメンは「存じてますよ」と言ってクスリと笑う。

「もしかして、貴方ってOAEのメンバーか何か?」

その割にエレガントだけど。

「はて?それは…スポーツクラブかなんかですか?」

イケメンはきょとんとしている。

もしかしてすっとぼけてるだけかもしれないので油断ならないわ。

「此方はお預かりしましょう」と言って物腰柔らかに携帯と財布が入った鞄も没収されたことだし。

「詳細は主人からお話させて頂きますので今しばらくご辛抱を」イケメンはニコリと柔らかく微笑んだ。

こんな訳の解らない展開なのに不思議と危険を感じさせないのは、このイケメンには品行方正な雰囲気が漂っているからかもしれない。

しかし、そんな安心感とは裏腹に車は都市部を抜け、郊外へと向かう。

閑静な住宅街を通り抜けると更に森の奥へと進んで行く。

「ちょっと!本当に何処に連れて行く気よ!」

「ご安心ください。手荒な真似は一切致しませんので」

イケメンは宥めるように言うものの既に私はパニックだ。

「嫌よ!帰る!降ろして!」

無理矢理ドアをこじ開けようとするが隣に座った髭の強面に身体を押さえつけられる。

「離してよ!痴漢!婦女暴行で訴えてやる!」

ジタバタと暴れるものの、完全な無駄足掻きだ。

「いーやー!コウ!助けてー!!」

騒ぎたてる私をみてイケメンも苦笑いだ。