ジキルとハイドな彼

元の静けさを取り戻し、私と友里恵はランチの続きをする。

「あの優等生の珠希が取り乱すとは恋愛って恐ろしいものね」

友里恵はしみじみ言いながらガレットと切り分ける。

「でもそこまで好きになる相手がいて羨ましいとすら思うわぁ」

確かに友里恵の恋愛はいつも打算的で、よく言えば冷静、悪く言えば冷めている。

私はチッチ、と舌を鳴らしフォークを横に振る。

「そうゆう人に限ってハマると案外人の道を外したりするもんよ」

「狂わされるほどいい男に出会ってみたいもんだわ」

友里恵はおかしそうにホホっと高笑いをした。


この後、友里恵はデートだと言うのでランチを食べた後に解散となった。

ショッピングでもしようかと麗らかな午後の街並みをブラブラと一人歩く。

お気に入りのセレクトショップへ行こうかと小径に足を踏み入れた瞬間、黒塗りの車が横付けされた。

私がチラリと視線を向けると道を塞ぐよう助手席のドアが開く。

中から鳶色の瞳をした美しい男性が降りてくる。髪の色も柔らかな栗色で一見すると外国の俳優さんみたいだ。

スラリと背が高く、身に纏ったブラックスーツがよく似合っている。

「沖本薫さんですか?」

男は流暢な日本語で尋ねるが「い、Yes」何故か私は英語で答えた。

「うちの主人が貴方にお会いしたいと申しております。突然の事で大変恐縮ですがご足労いただけますか?」

「は?」

私がビシリと固まると後部座席のドアが空いて、同じくブラックスーツを着た髭面の強面男が姿を表す。

この場合、私の拒否権はなし、だ。

「貴重なお時間をいただき恐縮です」外国人風のイケメンはニコリと微笑んだ。