ジキルとハイドな彼

「まさか、インチキ臭いゾッコンの男って小鳥遊のこと?」

私が尋ねると珠希は無言で俯いた。

ず、図星…

「どうゆう経緯があったのか解らないのだけど、小鳥遊は少々軽薄ではあるものの、結構いい子よ?仕事も優秀だし。あのお見合いの人よりかいいと思うけど」

コウが可愛がっている後輩なのでフォローしてみるが、珠希にキッと睨み付けられる。

こ、怖い…

私はビクっと身体を強張らせる。

「私は散々振り回されたわ!其れだけならまだしも素性も隠されて、本名すら今迄知らなかったんだから!」

「それはいけないわねー」友里恵はシャンパンを一口飲みながら、他人事のように言う。

「色々事情があったんだよ。ごめんね、珠希」

小鳥遊はくるりとした茶色い瞳で珠希の顔を覗きこんだ。

「狡い!狡いわ!またそうやって甘えて誤魔化して!もうその手には乗らない!私はお見合い結婚するんだから!」

珠希が立ちあがって騒ぎ立てるもんだから、周囲の視線が一斉に集中する。

「とりあえず、他のお客さんに迷惑が掛かるから外でやんなさいよ」

友里恵が冷静な口調で突っ込んだ。

そうですね、と言って小鳥遊は二コリと微笑む。

「おいで、珠希」

小鳥遊は武闘派らしく珠希をヒョイっと担ぎあげた。

「ちょっとおろしなさいよ!」珠希は小鳥遊の背中でジタバタ暴れてみるもののなす術なし。

「薫さん、今日のお会計は後で返すんで、立て替えておいてください」

小鳥遊は勘定の事まで気にする程の余裕を以ってして、怒り狂う珠希を難なく店の外へと担ぎ出した。

さすが出来る男。