ジキルとハイドな彼

暫くすると、お店の入口に見覚えのある茶色のふわふわ頭が姿を現した。

今日はTシャツにカーディガンを羽織りデニムを合わせたラフな格好に、黒いセルフレームの眼鏡を掛けている。

何だか休日みたいな装いだ。

右手を上げてブンブンと大きく振ると、小鳥遊は此方に向かって歩いて来た。

「はい、薫さん、葛城さんからだよ」

私は礼を言って差し出された鍵を受け取った。

「久しぶりだね。友里恵さんもお久しぶりです」

小鳥遊が嬉しそうに微笑み掛けてきた。

「一昨日会ったばかりじゃない」

小鳥遊のトンチンカンな発言に私はきょとんとする。

「久しぶりってのは珠希に言ったんだけど」小鳥遊は呆れ顔だ。

「ああ、そう珠希にね、どうりで…って、エエエっ?!」

意外な解答に一人ノリツッコミをしてしまう。

「相変わらず薫さんはオーバーリアクションだな」小鳥遊は怪訝な表情だ。

「マキ…」

珠希は大きな目でジッと小鳥遊を見つめた。

私と友里恵の頭にはクエスチョンマークが浮かんでいる。

「マキ…って誰のこと言ってんの?」私はポカンとしたまま尋ねる。

「俺の事。小鳥遊真輝がフルネームだから」

「へー」私と友里恵は興味なさそうに相槌を打つが、珠希の大きな瞳がみるみるうちに涙で潤んでいく。

「マキって…苗字かと思ってた」

「なに?2人は知り合いって事?」

友里恵が交互に2人へ視線を向けた。

珠希の思い詰めたリアクションを見る限り、ただの知り合いって感じでもなさそうだけど。