ジキルとハイドな彼

「薫も、ってどうゆう事よ。薫もって」友里恵が鋭く突っ込んだ。

「私、お見合いしたの」

「はあ?!」

意外過ぎる珠希の解答に私と友里恵は声を張り上げて聞き返した。

「例のインチキ臭いゾッコンの彼はどうなったのよ」

友里恵は眉根を寄せて尋ねる。傍から聞いているとその男性も酷い言われようだ。

「終わった」

キッパリと言ってのける珠希に私と友里恵は仰天する。

「またどうして?随分入れ込んでたじゃない」

私が聞き返すと珠希は小ちゃな顔を曇らせる。

「なんて言うか、待っている事に疲れてしまって。この歳で振り回される恋愛って結構しんどいじゃない」

「確かに。気力と体力を相当消耗するからね」

散々な目に遭っている私が言うと含蓄があるのか、2人ともうーん、と深く頷いた。

「私もまともな男性と結婚して心穏やかな生活を送るわ」珠希はグッと拳を握る。

「もしかして、この間ケイナンストアで会った時、一緒にいた男性がお見合い相手?」

「うん、そう。悪くないでしょ。メーカーにお勤めの人なの」

私が「確かに」と素直に同意すると、珠希は満足そうににっこり微笑んだ。

不意に携帯のメール受信音が鳴る。

送信元は小鳥遊からだった。

「ごめん、これからコウの後輩が届け物に来るってさ。間違えて家の鍵を2個持って仕事に出掛けちゃったみたい」

「あら、あの可愛い子?」面識のある友里恵が尋ねる。

「そそ、小鳥遊」

「葛城さんも休日出勤なんて大変ね」珠希が同情したように眉根を寄せた。