ジキルとハイドな彼

「ちょっと、コウ」

私が咎めても、意に介することなくコウはタブレットの画面を閉じる。

「物件なんて探す必要ないだろ」

「再来月マンションの更新なんだ。さすがに強盗が入った部屋には引き続き住む気はしないでしょ」

タブレットは諦めて私はごろりとベッドに寝そべる。

「このままうちに住めばいいじゃん」

コウは片肘をつき私の隣に横たわる。

「ありがとう。でも、いつまでも甘える訳にはいかないからもうちょっと探してみるね」

おやすみ、と言って私は毛布を顔まで引っ張り上げた。

が、しかし、コウによって即座に剥ぎ取られる。

「何で意地悪するのよ」

恨みがましい視線を向けるがコウは完璧に無視する。

出た、ハイド氏。

たまにコウは意地悪になる。

「月給の1/3以下に家賃を収めるとしたら薫の手取りだと8万円代が無難なとこだな」

「悪かったわね」私はムッとして言い返す。

「考えてもみろ。敷金礼金各一ヶ月、家賃85000円と考えて、年間で換算すると約120万円の無駄な出費がかさむことになる」

「はぁ…」コウお得意の理詰め攻撃だ。

「そんな無駄なお金を払ってまで薫が部屋を自分で借りたいというのなら、俺は別に止めないけどね」

コウはツンと澄ました顔をしている。

「素直に出て行って欲しくないって言えば?」

私が片眉を上げて言うとコウは何も言い返せずにグッと押し黙る。

「私の気持ちは伝えたけど、コウの気持ちはまだ何も聞いてないなー」

私が優勢に立つことは滅多にないのでニヤニヤしながらコウの出方を待つ。