ジキルとハイドな彼

私たちは手を握り合ったまま、コウの部屋へと帰宅する。

…なんか、ちょっといい感じかも。

散々な目に遭っておきながら、不謹慎にも私の胸は高鳴ってしまう。

コウが玄関の鍵を開けて、靴を脱ぐ。

私も部屋に上がろうとした瞬間「ストップ」と手で制された。

「もしや、罰として締め出し?」想定外の対応に私はギョっとして尋ねる。

「いや、そうじゃない。ただ…」

コウがいい淀んだので、私は「ただ?」と聞き返した。

「事件は、一先ずは解決した。事実上、薫がうちに泊まる理由は、ない」

何が言いたいのか、よく解らず私は眉根を寄せて首を傾げる。

「個人的に泊まりに来た、って認識になるけど、いい?」

コウは小さく咳払いをする。

「嫌なら、帰ってもらっても構わない。薫の自由だ」

私はくるりと後ろに振り返る。

コウに背を向け両足を揃えると、咄嗟に腕を掴まれた。

「へ?」驚いて振り向くとコウと視線がぶつかった。

「ほ、本気で帰る気かよ」コウは慌てた様子で私を引き留める。

「いや、靴を脱ごうと思ったんだけど…」

コウはハッと目を見開き、恥ずかしそうに俯く。

「カッコ悪。無理してるのバレバレだね」

私は靴を脱ぎ捨てると、ぴょんとコウに抱きついた。

「コウ大好き」

背中に回した腕にギュっと力を込める。

「死ぬ、って思った瞬間、貴方の事ばっかり思い浮かんだ」

コウは返事をする代わりに私の髪を優しい手つきで撫でる。