ジキルとハイドな彼

春日プレジデンスタワーに到着し、小鳥遊がエントランスの車寄せにプリウスを停車させると、コウは車を降りる。

「お疲れさまでーす」

「また明日」小鳥遊に乗っかり、私もさりげなく後に続く。

「はい!薫さんもお疲れさまでーす!」

「私は自宅まで送ってもらえるかしら」

「薫さん、お疲れさまでーす!」私の発言は完全に無視されている。

「いや…だから」

その時後部座席のドアが再び開く。

「薫、行くよ」コウが私の腕を引っ張った。

「え、ええ?!」縋るような視線を小鳥遊に向けるとバチリとウィンクを返される。

そのまま私は車から強引に降ろされた。

「じゃあ、また明日ー!」

小鳥遊はいつものかるーい感じで挨拶すると早々にプリウスを発進させて走り去っていった。

私はコウと2人取り残される。

腕はまだ掴まれたまま。

「あ、あの…腕離してもらえるかしら?」

控えめにお願いしてみるが、コウは無言のまま腕を握った手に力を込めた。

「痛い。離して!」

ジタバタする私の両腕を掴んでコウは抑え付けた。

「薫は頭が悪い」コウは無表情のまま暴言を吐いてきやがった。

「はあ?!」私は眉を潜めて聞き返す。

「それに単純で感情に流されやすくてすぐ騙されて、機転もきかない。その上、ドアも足で閉めるし、だらしなくて、寝相も悪くて、酒癖も悪い」

私への口撃は淀みなく続く。

「ちょっと!そりゃ言い過ぎでしょ?!」あまりにも容赦ないので思わず言い返す。

「言い過ぎじゃないだろ!」

コウが声を荒げたので私はビクリと身体を硬直させた。