完全に常連となった緑ヶ丘警察取調室。

私は仕出し弁当をガッツいていた。

朝から飲まず食わずだったため貧血を起こしかけたのだ。

「よく食べるねえ」向かいの小鳥遊が頬杖をついながら呆れ顔で眺めている。

ちなみに二個目の弁当だ。

「だって色々大変だったのよ」

「殺され掛けたもんね」小鳥遊は力なく笑った。

「そうよお」箸で小鳥遊をビシッと指す。

「銃声がしたからてっきり私が撃たれたかと思ったら、聡が倒れてたからびっくりしたわ」

「咄嗟に富永の手を撃ったんだよ。葛城さんがね。手元が狂って脳天をぶち抜かなくてよかったよ」

あははーと陽気に小鳥遊は笑ったが私は顔を引きつらせていた。

「でもよく分かったわねえ。私達があのビルの、しかも屋上にいたって」私は海老フライを食べながら尋ねる。

「だってずっと薫さんの居場所を携帯のGPS機能で追跡してたから」

口に含んだ海老フライを噴き出しそうになる。

「け、け、警察がそんな事していいの?!プライバシーの侵害甚だしい!犯罪じゃない?!」

「米粒飛んだよー汚ったないなあ」眉根を寄せて小鳥遊は頬を拭う。

「捜査に協力するって調書の同意書にサインしたでしょ?」

「だからって…だからって…いつから?!」私はプルプルと震える。

「薫さんが不法所持でしょっ引かれた時からかな」小鳥遊は無駄に可愛らしく小首を傾げた。

「今朝から薫さんの事をずっと尾行してたしね。だけど富永が勘付いたのか途中からビルに入って見失った時には焦ったよー」

小鳥遊はフゥと小さく溜息をついた。

「じゃあ、コウも全部知ってるってこと?」

「うん、バッチリ。見てたよー、全部」

全部、を強調してくるところが末恐ろしい。