「ちょっと調べる事があるだけなので、心配いりませんよ」

嘘だ。

調べるだけなら大の男3人も必要ない。

しかし誤魔化すように微笑み掛けると、アラサー女子は安心したように頬を緩ませ5階で降りて行った。


「さすが葛城さんっすね」

成川はキラキラした目で俺を見ている。

「なんだよ、気持ち悪いな」俺は眉間に皺を寄せた。

「笑顔一つで女子のハートを鷲掴みっす。葛城さんは恋の悩みとは無縁でしょうね」

成川の台詞を聞いて、田所さんが吹き出した。

絶賛女子に振り回され中の俺はいたたまれない。

なんとなくムカついて無言で成川の頭をはたく。

チン、とベルが鳴りエレベーターは13Fに到着する。

扉が開くと松本さんがエレベーターホールに立っていた。

「富永は?」

俺は声を落とし尋ねる。

「不審に思われないよう私は途中のフロアで降りたんですが、2人は外で電話がどうとか話していました」

「外に行こうとしてたって事か?」

田所さんは眉間に縦皺を寄せる。

「最上階で外と言えば、屋上でしょうな」松本さんがのんびりした口調で言う。

どうして2人は屋上に?

何だか嫌な予感がする。

「急ぎましょう」

廊下を走りながら小鳥遊に連絡する。

「富永を追って、屋上へ向かっている」

『本部の許可なく突入する気ですか?!』

「俺が許可する。いいだろ?」

『いいだろって…後で尾花さんに怒られても知りませんよ』

小鳥遊の呆れた表情が目に浮かぶ。