ジキルとハイドな彼

富永と薫は通りに面した坂を下っていき、好都合にも通りから一本小道に入って行く。

チャンス到来。

捜査員も其々2人の後を追う。

肩を抱いたまま、富永と薫は白い外観の建物の中へと入って行った。

その低層階には飲食店や美容室などの店舗が入っているが、上層階は居住スペースになっているようだ。

もし部屋に入られると厄介だな。GPSも屋内迄は追跡出来ない。

「袋のネズミですな、警視殿」

2人の姿が見えなくなったのを確認し、田所が声を掛けてきた。

「一室づつ調べて行きますか?」

成川ともう一名、スーツを着たスポーツマンタイプの若手捜査員も姿を現した。

顎に手を当てて、うーん、と唸る。

出て来るところを待っていれば、いつか2人は姿を現すだろう。

ちょっと長丁場になりそうだけど。

一旦待機する旨小鳥遊に伝えるべく連絡する。

『ああ、富永達は13階で降りました』

小鳥遊のまさかの回答に「へ?」と思わず聞き返す。

『松本さんが一緒のエレベーターに乗り合わせて富永が何処で降りるのか確認しました』

「早く言えよ」

松本さんグッジョブ。

釣り風ベストを着ていた中年の捜査員だ。

人の良さそうな顔をして案外大胆だな。

『急いで向かってください。松本さんも、13階で待機してます』

「了解。直ぐに向う」

派手な化粧をしたアラサーの女性が通りかかり、オートロックを解除する。

このビルの住人のようなので、警察手帳を見せ、女性の後に続き建物の中へと入っていく。

エレベーターに乗り合わせると、女性は物騒な事でもあるのかと思いっきり怪訝な表情で俺たちを見ている。