ジキルとハイドな彼

暫くすると、富永と薫が店から姿を現した。

少し距離をおき、薫達が並んで歩いている後をつけていく。

時々、薫が頬を染めて俯く姿をみていると胸がざわつく。

外車ディーラーの前で立ち止まり、2人が肩を組んで高級外車を眺めているのを目の当たりにすると、全身の毛穴が逆立つようにゾクリとした。

強烈な嫉妬。

自分にこんな感情があったなんて驚きだ。

散々薫を利用している富永が腹立ただしいのは勿論、薫も今だに富永に未練があるのかと思うと憎らしくすらなる。

昨日手を掛けなくて本当に良かった。

もしあのまま関係を持っていたら理性で自分を抑えられていたか自信がない。

不意にポケットの携帯が震える。

「はい葛城です」

『小鳥遊です。付近にいた捜査員は応援で呼び寄せました』

辺りを見渡すと見知った顔がチラホラと見受けられた。

スーツを着たサラリーマン風の男

釣りにいく時のようなベストを着た休日風の中年

そしてセンスの悪いネクタイを締めた地味顔の青年

青年と目が合うとウィンクされ、俺は思わず舌打ちする。

「なんで成川がいるんだよ」

『緊張で配置してるんすからワガママ言わないでください』

ごもっとも。選り好みしている場合じゃない。

「俺が手を上げて、合図を送ったら逮捕だ。其れまで現配置にて追跡を継続」

『了解』

指示を出して、一旦電話を切る。