ジキルとハイドな彼

「一旦新宿駅に到着してすぐに青山方面に移動してるみたいだ。多分地下鉄に乗ってるな」

俺は画面で薫の居場所を確認する。

「大江戸線すかね」

位置情報を示すフラグは六本木で止まった。

「みたいだな。六本木で降りたようだ」

窓の外に目を向けると、都心に近づくにつれ車が増え交通の流れが悪くなってきた。

「久々やっちゃいます?あれ」

「え」俺の眉毛がピクリと痙攣する。

「嫌がってる場合じゃないっす。ほらっ!早く」

小鳥遊に促され、足元の黒い収納ケースから赤色回転灯を取り出すと、ルーフに載せた。

それからフラットビームをオンにする。

「緊急車両が通過します」

小鳥遊はさらにハンドマイクを手にして、他車へ緊急車両の通行を警告する。

サイレンをけたたましく鳴らしながら、日中の混み合った大通りを駆け抜ける。

俺は持っていたニット帽を目深に被った。


小鳥遊の携帯が再び鳴る。

耳につけたインカムのスウィッチを入れると車のスピーカーを通し聞き覚えのある低い声が聞こえて来る。

『田所だ』

「おつかれーす」小鳥遊はハンドルを握ったまま話続ける。

『今、沖本薫を追って六本木ヒルズの展望台に来ている』

本当に会社をサボっただけなんじゃないかとふと不安が胸を過る。

『先ほど富永聡と合流した』

俺は、一瞬我が耳を疑った。