ジキルとハイドな彼

不意に携帯の着信音が鳴る。

「はい、小鳥遊です。ああ、どうも、お疲れっす-」

小鳥遊は何度か相槌を打った後に「え…」と言って表情が固まる。

嫌な予感がする。

「了解す。葛城さんに報告します」

小鳥遊は電話を切って此方へ振り向く。

「薫さんが奇怪な行動をとっているようです」

小鳥遊はカーナビのスイッチを入れる。

「え、いつもの事じゃない?」

俺が眉間に皺を寄せて言うと小鳥遊は「まあ、そうすけど」と否定する事なく苦笑いを浮かべる。

其れから、カーナビの画面をタッチしながら操作すると地図にフラグが立つ。

「薫さんは会社に行かず何処かへ向かって移動しているみたいです」

カーナビ上のフラグがゆっくりと動いている。

「薫の携帯をGPSで追跡してるのか」

俺の問いに、小鳥遊はこっくり頷く。

「まさか会社をサボって買い物にでも行ってるんじゃないんでしょうね」

「どうだろう。仕事をサボるタイプにはみえない」

まあ、そっすね、と言って小鳥遊は顎に手をおき考え込む。

「昨日変わった様子はありませんでした?」

小鳥遊は茶色い瞳で俺の顔を覗き込んだ。

昨夜、襲われかけた光景が頭の中にフラッシュバックする。

…あった。メチャクチャ変だった。

「薫のところに向かう」

小鳥遊は、りょーかいっすー、といつもの如く軽い感じで言う。

車のエンジンをかけるとタイヤを軋ませ急発進させた。